紫の気まぐれ映画日記

気まぐれに観た映画を気まぐれにぶっちゃけ批評☆

映画『きっと、うまくいく』考察レビューまとめ!なぜここまで評価が高いのか??

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ストーリー

日の出の勢いで躍進するインドの未来を担うエリート軍団を輩出する、超難関理系大学ICE。エンジニアを目指す天才が競い合うキャンパスで、型破りな自由人のランチョー、機械より動物好きなファルハーン、なんでも神頼みの苦学生ラジューの“三バカトリオ”が、鬼学長を激怒させ、珍騒動を巻き起こす。 抱腹絶倒の学園コメディに見せつつ、行方不明のランチョーを探すミステリー仕立ての“10年後”が同時進行。根底に流れるのは学歴競争。加熱するインドの教育問題に一石を投じ、真に“今を生きる”ことを問いかける万国普遍のテーマ。

 

https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B00ITGLFVK/ref=atv_dp_share_cu_rより引用

 

目次

 

きっと、うまくいくを徹底考察レビュー

2010年インドアカデミー賞で作品賞など計16部門を受賞し、インドで興行収入歴代ナンバーワンを記録した大ヒットヒューマンコメディ・ストーリー。

傑作名高いこの映画、近年のボリウッドブームもあり、すでにご存知の方も多いのでは。

かの私は、お恥ずかしながらボリウッド作品は今作が初鑑賞。

ボリウッド作品の、あの独特な空気感を勝手に警戒して今の今まで手を出して来なかったのですが、この作品を見つけた時、鑑賞した方々のあまりの評価の高さに非常に興味をそそられ、ついに恐る恐る(失礼)鑑賞いたしました。

結果、大・大・大感動。

こんな良い映画だったとは!!かのスティーブン・スピルバーグに「3回も観るほど大好き」と言わしめたのも納得。

この映画の何がそんなに素晴らしかったのか。私の感じた良さを思う存分、ネタバレなし・あり両方でレビューしていきたいと思いますので、まだご覧になってない方も、もうご覧になった方も、どうぞお付き合いください!

 

 

きっと、うまくいくのネタバレなしレビュー

この映画の英題は『3 Idiots』。

意味は「3バカ」で、この題名通り、工科大学に通う学生の3人がドタバタ青春劇を繰り広げます。

邦題である『きっと、うまくいく』は主役の1人で天才肌のランチョーのモットー「Aal Izz Well」(All is wellが訛ったもの)を訳したもの。

このランチョーと、あと2人の主役、ファルハーンとラージューが寮で同室になった事から、天才ゆえに自由で破天荒なランチョーに振り回され感化されながら、やがて3人は親友同士になっていくのです。

この彼らの青春を育むドタバタ劇だけでも充分見応えある今作。しかしこの映画がスゴイのは、ただの青春劇だけとどまらない舞台背景。

彼らが青春を過ごすのは、インド屈指の難関工科大学ICE(ちなみにこれは架空の大学だけど、モデルになった大学があるらしいです)。「3バカ」と言いながら、彼らは狭き門を突破したエリート学生達なのです。

しかし、特にファルハーンとラージューは、それぞれ家庭の事情や自身の葛藤により成績はギリギリ、なかなか順風満帆とはいっていない。

そこへ来て色々やらかすランチョー(困った事にランチョー自身は天才)とつるむもんだから、それは問題も起こすし先生にも諸々目をつけられるってもんです。

そしてこの難関学校が抱える問題は彼ら主役3人だけでなく、在籍している他の生徒や、それ以外の人々をも巻き込んで、ただのコメディーを超え、近年の学歴主義の教育問題を浮き彫りにしていきます。

「バッカだな〜〜ワハハ」と油断して映画を楽しんでいると、突然やってくる「えっ?!」と驚く急展開。まるでジェットコースターに乗っているかの様な怒涛の展開に、きっと驚かされる筈です。

またこの映画の特徴として、現在と過去のストーリーが同時進行する2部形式という所があります。

青春ドタバタ劇は実は過去のお話で、現在では成長しバラバラに過ごしていた面々が、行方不明になったランチョーを探す旅に出る、というミステリー仕立て。

おいおい、どんだけ盛り込むんだよ、見応えありまくりです。

そしてもちろんインドの映画なので、ミュージカルシーンも健在です。ですがこれが、そんなにメインの物語を邪魔していないのも素晴らしい。

(ザ日本人の私からすると、わざわざ敢えて歌って踊らんでも……と思わないでもないですが)前途のようなジェットコースター展開の合間にうまく差し込まれるので、ちょうどいい息抜きになるのです。この辺のバランスも計算の上なら、この映画作った監督凄すぎる。

ちなみに、プチネタバレになるかもしれないのですが、この映画、170分というなかなかの長大作。なんと途中でいきなり「後半へ続く!」的なメッセージがドーンと出てきて、まるで連続ドラマの様に一旦物語が終了します。

私がインド映画初心者過ぎて全く知らなかったのですが、そもそもインド映画は上映時間が長い作品が多いので、基本的に物語の中盤あたりにインターバル(休憩)が設定されているのだとか。

そんな事とはつゆ知らず、急に連ドラ仕立てになった上に、ここはインドの映画館ではないので実際には休憩は挟まれず、何事もないかの様に続きが流れ出したので、私たまらず大爆笑。さすがコメディー映画、なんて新しいボケなんだと笑。

もしインド映画初体験の方がいらっしゃったら、是非中盤のインターバル演出もお楽しみに笑。

 

 

きっと、うまくいくのネタバレありレビュー

さぁ物語の核心に迫っていくネタバレありレビュー!

基本的に映画の内容を知っているのを前提に書いていきますので、まだ観ていない方はチンプンカンプン間違いなしです。そしてネタバレ要・要・要注意!

それではいきまーす。

 

 

さてネタバレなしレビューにも書いた様に、とにかくこの映画、ジェットコースターの様な怒涛の展開が続きます。

「これがこの映画の“山“に違いない!」と思う様な展開が実にいつくも出てくるのですが、とにかくこのコメディの部分とシリアスの部分の、バランスというか、見せ方が素晴らしく上手い。

最初に度肝を抜かれた演出が、主題歌「Aal Izz Well」を歌うミュージカルパートの最後、ジョイ・ロボの自殺現場をラジコンヘリ越しに見つけるシーン。

それまで一貫してコメディ調で、「お決まりの愉快なミュージカル始まったわ〜全校生徒集めたん?すごいお祭り騒ぎじゃん〜」とニヤニヤ観ていた直後の垂直落下展開。ここで、「あ、この映画ただのコメディじゃない」と思い知らされる訳です。

その後も現在パートでランチョーは実はランチョーではなかった?!というミステリーが勃発したかと思うと、ラージューのまさかの飛び降り自殺未遂。

まぁこれは元を正せばラージューはじめ3バカ御一行の素行が非常に悪かったのだけど、そもそもこの大学の最高権力者である学長ヴィールーという人物の、やり方も駄目。圧倒的に悪い。ランチョーを目の敵にするあまり、教育者としてあるまじき選択をラージューに強いるし、そもそもロボの様な自殺者を出しておきながら、生徒を恐喝して従わせようとする姿勢や徹底した成績主義を少しも変えようとしない。アナタ全く懲りていないじゃない!

案の定追い詰められちゃったラージューが窓から飛び降りた時は、思わず声が出ちゃいました。

正直この映画が2部構成で、現在パートにおいてラージューがピンピン元気に生きているのは最初から知っているから、死ぬかもしれないとかそういう心配は全くないにも関わらず、何故かドキドキしてしまうし、絶対目を覚ますと分かっていながら、ランチョーやファルハーンや同級生達が病院に通い、必死に話しかけ励ますシーンには思わず涙が……。なんか悔しい。

 

その後も怒涛の展開が続き、ファルハーンの堅物お父さん説得のシーンや、復活ラージューの面接の勇姿を経て、いよいよ最後の大山場。

一体いくつ山越えさせるの、この映画は。

そもそもの発端は悪学長のせいなんだけども、ラージューの為に試験の答案を盗んだ事がバレてしまった3バカトリオは、ついに退学が言い渡されてしまいました。

その日は道路が浸水するほどの豪雨。そんなタイミングの中悪学長の娘で、ランチョーの彼女(?)ピアの姉でもある妊婦モナがなんと破水。しかし悪天候過ぎて病院に行けない。大大ピンチ。

ほら学長が意地悪するから!言わんこっちゃない、神様は見ている。

しかしそこに荷物をまとめて出て行くつもりの3バカが登場し、病院に搬送するのは諦め、大学内でなんとか出産させる事を決意します。

豪雨で街が停電し絶体絶命、しかし幸いにもここはインド屈指の工科大学。生徒達を総動員し、車のバッテリーから電力を確保し、難産で苦しむモナの為に即席で吸引器を作り、無事赤ちゃんの取り上げに成功します。

父親である悪学長はオロオロするだけで特に役に立たなかった中、ランチョーは見事にリーダーシップを発揮してモナとその子供を救いました。

取り上げた直後は全く泣かなかった赤ちゃん(何故あんなに人形感丸出しだったのかは置いておいて)、ランチョーのお決まり「Aal izz well」の掛け声で産声をあげるシーンも、非常に分かりやすい伏線回収にも関わらずフゥゥ〜!ってなるし、その後の悪学長がランチョーに逆ギレしながらも感謝し、大事にしていたペンを渡して和解するシーンも何故か号泣。

ことごとく製作陣の思惑通りの反応をしている私!

悔しい。

 

そして物語のラストは現代に戻り、ついに卒業以来行方不明だったランチョーのと元へ辿り着いたファルハーン、ラージュー、ピア、チャトルの面々。

映画冒頭からの伏線の、学生時代から一方的にランチョーをライバル視している同級生で、今や会社のNo.2にまで上り詰めて自信満々なチャトルが、喉から手が出るほど契約したがっていた天才発明家『フンスク・ワングル』という人物こそ、ランチョーの本当の姿でした!という大オチ。

あーそう、そうだよね!ちょっと考えれば分かるよね!!

でも私、映画の勢いに押されてなされるがままに見入っていたので、全く気付きませんでした!!

他の方の口コミとか考察読んでると、このオチは分かりやす過ぎてすぐ分かったけど、それを踏まえても爽やかハッピーエンド過ぎて好き。って意見が結構見受けられました。

私は全然考えもしなかったので、終盤その事実に気付いた時点で「オホッ」みたいな変な声が出ましたよ。

確かに分かりやすく王道、誰もが好きであろう展開。大ハッピーエンドとでも言いましょうか。

最後には美しい風景をバックに、慌てて許しを乞いながら追いかけてくるチャトルから、みんながキャッキャウフフと逃げる、という完璧な演出付き。

これをハッピーエンドと言わずして、何をハッピーエンドと言うのでしょう!

 

現代の若者や教育現場の間にある闇をしっかり提起しながらも、あくまでも一大エンターテイメントコメディとしてまとめ上げた今作。

観終わったあとの爽快感は、今まで観た映画のどれにも勝るとも劣らない、むしろ、今までで1番かも……?

170分という長丁場でも、観客を少しも退屈させず、疲れさせないのも素晴らしい。あっという間の3時間弱でした。

 

 

まとめ

とにかく素晴らしい所だらけのこの作品、シナリオが抜群に素晴らしいのはもちろんの事ながら、やはり良い映画には良い俳優さん方が不可欠ですよね。

この映画も、やはり主役のお3方をはじめ、悪学長や美女ピアなど、素晴らしい俳優さん方の熱演のお陰で、より素晴らしい作品になっていると思います。

そして何より驚いたのが、3バカトリオを演じた俳優さん達の年齢!過去の学生パートも現代の社会人パートも全て同じ俳優さんが演じているのですが、なんと撮影当時、3人共30歳を超えていたらしいですよ

特にランチョー役のアーミル・カーンは当時44歳(!)で、役によって肉体改造を徹底するので有名らしいです。

そんなの調べるまで全っったく分からなかったですよ!さすがに本当の大学生とは思ってなかったけど、まさかそんなに年上だったとは……恐るべきトップスター。

 

ちなみにこの映画は、忙しい時や何かしながらの”ながら見"には向いていないと思います。

長いけど、いや長いからこそ、好きなお菓子でも用意して、ゆっくりじっくりと観賞していただくのをお勧めします。

もちろん、途中のインターバルで本当にインターバルするのは大変オススメです笑。

 

最初から敷かれた数々の王道伏線、そして演じる俳優さん達の裏事情(笑)も含めて、

是非この映画をたくさんの人に楽しんで頂きたいです!!